研究目的は報告したとおり同所性累系部分小腸移植において、粘膜増殖因子(ECFなど)が小腸移植片の粘膜増殖能、吸収能に及ぼす影響をみるものである。小腸移植モデルにはdonorにBrown-Norway雄性ラット、recipientにLewis雄性ラットを用いた。また対照群としてdonor、recipientともにLewis雄性ラットを用いた同系部分移植モデルを作成した。モデル作成手技は田口らの方法に準じ20cmのドナー空腸を採取し二期的に移植を行った。移植モデル作成成績は昨年度購入したシリンジ注入ポンプの使用、二期的に移植を行う方法に切り替えたこと、さらに田口らのモデル作成手技をより安全に行えるよう工夫、改善したこと、助手用顕微鏡による手術補助、などにより長期生存が得られる安定したものとなった。 検討項目は、ラットの体重変化、粘膜増殖能(形態学的変化、PCNAによる細胞増殖率)、in vivo recirculation techniqueを用いたin situでのglucose吸収能の測定を行った。 基礎データとして小腸広範囲切除モデルのEGF投与、非投与各群で経時的にみた。EGFは腸吻合直後よりEGF10μg/kgを含む生食1mlを、非投与各群では生食のみ1mlを計9回腹腔内投与した。体重を術前体重に対する比(%)でみるとEGF非投与群ではPOD-2、7、14、の順に84.0%、77.0%、63.9%、EGF投与群では順に88.9%、80.8%、86.6%、であった。陰窩長はEGF非投与群ではそれぞれ206μm、154μm、164μm、EGF投与群では182μm、281μm、214μmと基礎実験でみる限りEGFによって粘膜増殖がPOD-7頃より促進される傾向にあることが示唆された。 現在同系移植モデルで、EGF投与、非投与の2群間で実験中である。
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