研究概要 |
平成5〜6年度にかけ咀嚼システムの生後発達とその調節因子についてマウスを用い研究し,以下のような結果を得た. 1.性成熟に伴い,マウスの咬筋においてlactate dehydrogenase(LDH)のアイソザイムパターンに性差が発現した.精巣摘出により性差の発現は抑制されたが,卵巣摘出によりアイソザイムパターンは影響を受けなかった. 2.アンドロゲンが咬筋における性差の発現を誘導した.アンドロゲンのアンタゴニストであるサイプロテロン・アセテートがこの誘導を阻害した. 3.性成熟にともないアンドロゲン・レセプターが雄雌マウスの咬筋の前線維に観察された.発現時間と分布に性差は認められなかった. 4.短期間の咬筋神経切断によってはアンドロゲンによる性差誘導作用は阻害されなかった. 5.咬筋を支配する三叉神経運動核を構成する神経細胞数に性差が観察され,この性差の発現にアンドロゲンとエストロゲンが関与することが示唆された.今後の研究課題である. 6.歯根膜が未発達なop/opマウスにおいて咬筋を構成する筋線維の萎縮が早期に引き起こされた.さらに,三叉神経運動核,および開口反射に関与する運動核と感覚核におけるニューロン数の減少が観察された.
|