研究課題/領域番号 |
05454492
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
柳澤 孝彰 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (10096513)
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研究分担者 |
東田 久子 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80085828)
見明 康雄 東京歯科大学, 歯学部, 助教授 (00157421)
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キーワード | フッ素(フッ化ナトリウム) / フッ素症歯 / 琺瑯質(エナメル質) / 顕微X線法 / 光学顕微鏡 / 偏光顕微鏡 / 高分解能電子顕微鏡 / 微小領域電子回折法 |
研究概要 |
口腔内に萌出したフッ素症歯には種々の程度の欠損が見られ、しかも着色を来している例が多かった。この種の変化はヒトやブタの例で特に顕著であったが、ラットでは色素沈着を来したものは皆無であったばかりか、生理的に認められる鉄の沈着すら欠いている例も多かった。未萌出歯では欠損や着色を肉眼的に認めた例は殆どなかったが、そのようなものでも歯面全体もしくは一部に琺瑯質特有の透明感が失われていた。 研磨標本で観察すると、ヒト・動物を問わず、また、萌出・未萌出を問わず、いずれも基本的には類似の所見を呈していた。すなわち、透過光線で観察すると琺瑯質の最表層は透明な薄層からなり、その直下に幅広い暗く不透明な領域を伴っていた。マイクロラジオグラフでこれを見ると、表層の薄層は比較的高い石灰化度を示していたが、不透明な領域に相当する部分では低石灰化となっていた。低石灰化領域では、琺瑯質特有の負の複屈折性を喪失していたことが偏光顕微鏡により確認された。その他、ヒトの例ではあるがハンター・シュレーガーバンドが表層付近にまで明瞭に認められるものが多かった。 高分解能電子顕微鏡で観察すると、表層の高石灰化層には大小種々の大きさの結晶が密に配列していた。c軸横断像で扁平六角形を示す大型結晶は、対照のものより数段大きいが、結晶格子の間隔は8.17Åで通常の琺瑯質を構成するhydroxyapatiteのそれと一致するものが多かった。小型結晶の基本形態は正もしくは不正六角形で、その格子間隔は8.12Åを示すものが多かった。この間隔はfluorapatiteのそれと一致する。低石灰化領域では全結晶量が少なく、特に小型結晶はほとんど認められない。未萌出歯での所見も基本的には同一であったが、小型結晶の数が極めて少なく、また表層の結晶間領域が萌出歯より広い印象を与える。
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