吸すすりリズムは、延髄に内存するリズム発生器によって形成されることが、モルモット新生仔における研究代表者の解析により明らかにされている。しかし、リズム発生器を構成するニューロンのどのような活動によって吸すすりリズムが形成されるかは明らかでない。一方、ラット新生仔で自発性の呼吸リズム活動を示すin vitro脳幹-脊髄標本が開発され、呼吸運動の中枢性リズム形成機構の解析が最近飛躍的に発展した。また、このin vitro脊髄標本では歩行リズムが誘発できることが報告されている。本研究は、1)新生仔ラットのin vitro脳幹-脊髄標本でリズミカルな吸すすり運動を誘発する方法を開発し、2)この標本で吸すすりリズムの中枢性形成のニューロン機構を明らかにする、ことを目的とした。 本年度は下記の実験によりin vitro脳幹-脊髄標本で吸すすりリズムを誘発し後述する事実を明らかにした。生後1-4日のラット新生仔の脳幹-脊髄標本を灌流液中に固定し、横隔神経に軸索を送る第4、5頸髄前根、三叉神経、舌下神経、顔面神経それぞれの断端から吸引電極で神経発射活動を記録し、各種の神経作動物質を灌流液中に加えて、三叉神経、顔面神経および舌下神経から、呼吸とは異なったリズミカルな群発活動を誘発する物質を検索した。さらに、一部の実験では顎顔面器官との連絡を保ったin vitro脳幹-脊髄標本を用いて舌や咀嚼筋の筋電図活動を記録した。1)NMDA、グルタミン酸の投与によって、顔面神経ならびに舌下神経から呼吸とは異なったリズミカルな群発活動を容量依存性に誘発した。2)このリズム活動はNMDA拮抗物質であるDL-AP5の投与によってブロックされた。3)NMDAの投与によって、舌は呼吸とは異なるリズミカルな筋電図活動および運動を示した。4)破壊実験からリズムの発生に関与する神経構造物は下部脳幹にあることが判明した。
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