研究概要 |
血小板活性化因子(PAF)は様々な生理、病態生理に関与するリン脂質メディエーターと解されている。本研究は唾液腺におけるPAF生合成調達機構およびPAF受容体の発現顎下腺ムチン分泌反応とそれに関わる細胞内情報伝達路とその分子機構について検討し、以下の結果を得た。 1.イヌ耳下腺、顎下腺、舌下腺細胞においてACh,NE,ionomycinはPAF産生を著明に促進した。NEの作用はα受容体を介していた。AChおよびNEは細胞外液Ca^<2+>濃度に依存してアラキドン酸の遊離とPAF産生を促進した。 2.PAF合成酵素lyso-PAF:acetyl-CoA acetyltransferase活性はACh,NE,isoproterenolおよび8Br-cAMPにより上昇した。細胞外液Ca^<2+>の除去はAChの作用を減少させたがNE,isoproterenolおよび8Br-cAMPによる上昇には影響しなかった。 3.DTT-insensitive chlincphosphotransferase活性はAChにより上昇し、細胞外液Ca^<2+>除去によりさらに上昇した。 4.PKCのPAF生合成への関与は少なかった。 5.PAFはモルモット顎下腺からのムチン分泌を促進した。PAFは顎下腺細胞内Ins(1,4,5)P_3濃度を軽度上昇させた。PAFは顎下腺細胞内遊離Ca^<2+>濃度を軽度上昇させた。 6.RT-PCR法によりPAF受容体mRNAの発現がモルモット耳下腺、顎下腺において認められた。mRNAをアフリカツメガエル卵母細胞に注入することによりAChによるCl-currentが観察された。しかしPAFに対する応答は見られなかった。 7.Digitonin膜透過性細胞においてPAFは一過性のCa^<2+>遊離を引き起こした。 これらの結果より、顎下腺におけるPAF生合成は神経伝達物質AChおよびNEによりCa^<2+>を介するremodelling系を介して調節されることが示された。また、顎下腺にはPAF受容体が存在し、PI代謝回転を介してムチン分泌に関与する可能性が示唆された。さらにPAFは細胞内Ca^<2+>プールからCa^<2+>遊離を引き起こすことにより細胞内情報伝達物質として機能する可能性も示唆されるなど、唾液腺におけるPAF生合成とPAFのムチン分泌における役割の一端を明らかにできた。
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