1.味覚受容膜標品と放射性アミノ酸との結合実験 アミノ酸に高い感受性を持つコイ味覚受容細胞膜から調整した味覚受容膜標品と^3H-標識アミノ酸との結合様式を調べた結果、【.encircled1.】L-アラニン、L-グルタミン酸、L-アルギニン、L-アスパラギン酸の膜標品への結合は、それぞれ他のアミノ酸の存在下でも影響を受けないが、同種のアミノ酸では濃度依存的に抑制された。【.encircled2.】各アミノ酸の結合は、非常に高い親和性で起こっていた。以上のことから、コイ味覚受容膜には各アミノ酸固有の高親和性受容体が存在することが示唆された。 2.味覚受容に関するGTP結合蛋白質の探索 味物質の受容体への結合からの情報変換機構の役割を果たすと考えられるGTP結合蛋白質を味覚受容細胞で確認することを目的として、クローニングを試みた。コイのヒゲ、口唇から調整したPoly(A)^+mRNAからcDNAを合成、既知のGTP結合蛋白質alphaサブユニットから2ヶ所のシークエンスをプライマーとしてPCRを行ない、約300塩基の味覚器由来cDNA断片を得た。これをクローン化した後、その塩基配列からアミノ酸配列を調べた結果、10個がGi型、1個がGs型のGTP結合蛋白質のシークエンスとよく似た配列を示していた。これらのクローンはコイの味覚器から抽出したmRNAを出発材料としており、10例得られたGi型のものがガストデューシンのアミノ酸配列と類似しており、コイ味覚受容機構に介在するGTP結合蛋白質である可能性が極めて高い。
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