研究概要 |
1.口腔内黄色ブドウ球菌の検出 我々は特に小児口腔内の黄色ブドウ球菌に着目し検討した。黄色ブドウ球菌の検出率は32.6%でMRSAは10%であった。5年前の検査結果では黄色ブドウ球菌の検出率が40%、MRSAは1.9%で、黄色ブドウ球菌の検出率は余り変化していないのにも関わらずMRSAは5倍近い増加を示しており、小児口腔がMRSAのレザーバーとして定着しつつあることが明らかとなった。 2.溶菌酵素の性状の比較 溶菌酵素として51kDa glucosaminidase,62kDa amidaseについて検討した。メチシリン感受性黄色ブドウ球菌ならびにMRSAについて両酵素の溶菌活性について検討した結果、活性そのものには両菌で差がなく、むしろ溶菌を制御しているメカニズムについて検討する必要があることが明らかとなった。 3.活性制御因子についての研究 活性制御についての研究の過程でdetergent(Triton X)がMRSAのベータラクタム系抗生物質感受性を著しく高めることを見いだした。この作用は,他の細胞壁合成阻害剤では認められず,Tritonの親水基の長さによって異なり、TritonX100がもっとも強い作用を有することがわかった。菌はTriton X-100処理によってリポタイコ酸を遊離することから、感受性の増加が、リポタイコ酸の遊離による溶菌酵素の活性化によるのではないかと考えられた。しかしながら、溶菌酵素非産生株でも同様の現象が認められる、使用するTritonの濃度ではPBP2Aの産生、ペニシリンのPBPにたいするアフィニティには影響しないことから、溶菌系に直接関係しない未知の作用によると考えられた。現在、Tritonがおよぼす菌体側の因子を分子生物学的手法を用いて探索中である。
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