歯周疾患などの慢性炎症の遷延化に伴って認められる骨代謝調節の破綻に関連して、骨芽細胞及び破骨細胞の細胞内情報伝達機構の解明をめざしている。これまで得られた主な所見は以下の通り要約される。 1.株化骨芽細胞をインターロイキン1(IL-1)で刺激する際、転写因子NF-kBの活性化が認められた(未発表)。 2.マウス骨髄培養系において、細菌性リポ多糖(LPS)の破骨細胞形成に及ぼす影響を調べ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が関与することを明らかにし報告した。 3.上記の破骨細胞形成を調べる骨髄培養系において、歯周病関連細菌3種の異なるタイプの LPS標品と合成リピドAは何れも破骨細胞形成に促進的であり、それぞれの効果はLPSのリピドA部分によって担われていることを示した(論文準備中)。 4.グルココルチコイドの過剰量を長期間使用した際の副作用の一つとされている骨粗鬆症の病因に関連して、同じ骨髄培養系を用いて、デキサメサゾンが破骨細胞形成に促進効果を示し、この効果にGM-CSFの抑制を介する機序が関与していることを明らかにし報告した。 5.マウス骨髄細胞と骨髄間質細胞株ST2との共存培養下で形成された破骨細胞様細胞を大量の成熟した細胞集団として純化し、この実験系を用いることによって、M-CSF及びIL-1が破骨細胞の生存維持に有利に働くことを明らかにした(論文準備中)。
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