研究概要 |
特定の歯周病原菌例えばPorphyromonas gingivalisなどに対する歯周炎患者のIgG免疫応答は、本菌種の歯周局所での増加を反映するものとしてだけ把握されてきた。すなわち特定菌種の歯周局所での増加を間接的に知ろうとする診断学的意義が優先されてきた。しかし私共は、1993年度および1994年度に歯周病原菌P. gingicalis菌株の特定の表層抗原に対する抗体が防御機能を果たしていることを明らかにしてまたActionobacillus actinomycetemcomitans線毛抗原に対する特異抗体も防御性機能を果たしていることを明らかにすることができた。さらに1995年度は、Campylobacter rectusを加え、それら歯周病病原菌の上述抗原に対する特異抗体を調整した。すなわちウサギ免疫抗血清だけでなくマウス単クローン抗体の作製し、その作用を種々検討した。調整したC. rectusの表装抗原タンパクであるS-layerに対する単クローン抗体は、本菌のモルモットマクロファージによる食菌および殺菌能を高める作用を有していた。しかしながらin vitroにおけるC. rectusのS-layer保有株の補体媒介性殺菌能を亢進させるような働きは見出すことができなかった。C. rectus全菌体に対するウサギ免疫血清は、オプソニン作用およびマクロファージの殺菌能を亢進させたが補体媒介性殺菌作用を促進させる作用はほとんどなかった。歯周病患者の各歯周病原菌全菌体に対するIgG,IgA,IgM抗体をELISAで測定すると共に特定細菌に対する機能的な総合抗体価についても検討した。各抗体価は、経時的な歯周病の病態との関係および特定菌種の感染の有無と対応させて調べた。各菌種のそれぞれの表層抗原に対する特異抗体がそれらの補体媒介性殺菌作用、オプソニン作用、白血球殺菌能亢進作用を持つことを明らかにすることができた。
|