| 研究概要 |
歯周炎の増悪にはグラム陰性嫌気性菌が関与していると報告されているが,そのメカニズムは十分に明らかにされていない。歯周炎の発病と関連している細菌としてP.gingivalis(Pg),P.intermedia(Pi),A.actinomycetem comitans(As)などの嫌気性菌がある。特に、これら嫌気性菌由来の生物活性物質が歯周炎の発症と関係があるのではないかと考えられている。従来の研究では、これらの物質を培養条件の同じ細菌から抽出したものではなく個々に調べたものであり、また生物活性を調べる細胞についても多くのヒトより採取しているため、そのまま生物活性を比較検討することは困難であった。
本実験では前年度までに、歯周炎患者から分離・同定したPg,Pi,Aaよりouter membrane,vesicle,Lipopolysaccharide(LPS)を同一条件で抽出・精製し、また同一ヒトより採取した歯肉および歯根膜由来の線維芽細胞を培養した。
本年度は、それらに3種類の生物活性物質を作用させ、細胞の分裂能及び分化能を系統的に分析した。その結果、刺激濃度に応じて分裂能に一定の変動がみられ、特に菌種間ではPi、生物活性物質の中ではvesicleによる刺激の際に、その変動が大きい傾向が見られた。変動は歯肉および歯根膜由来の細胞はともに同様の傾向であった。アルカリフォスファターゼ活性を指標に検討した分化能でも、濃度に応じて同様の傾向がみられたが、歯肉由来の線維芽細胞では相対的に活性が低かった。さらに刺激後の線維芽細胞の形態を電子顕微鏡で調べたところ、細胞膜に形態変化が見られた。
以上のように統一した条件下で研究を行うことで、より明確に生物活性を検討することができた。
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