研究課題/領域番号 |
05454521
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
上野 和之 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00048307)
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研究分担者 |
八重柏 隆 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (50220116)
熊谷 敦史 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (20195514)
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キーワード | 皮膚科的疾患 / 歯肉と粘膜 / 診断と予後 / 病理発生 / 治療効果 / 臨床病理学的研究 |
研究概要 |
前回までは歯肉や口腔粘膜の皮膚科的疾患について臨床的分析を試み、これらの病変は水疱性粘膜疾患と炎症性角化症が主体であることを示した。今回は歯肉に初発した21例の剥離性歯肉病変例(男性 2例、女性19例、平均年齢:47.3歳)の臨床病理学的検索から、診断や成り立ち、さらには治療法に対する考察を試みた。その結果、帯状の浮腫性紅斑と斑点状の紅斑を示す例が多く、殆どが女性で現れ、帯状病変例は上顎臼歯部と下顎前歯部の唇頬側に生じやすい特徴を示した。また帯状病変例の約半数が数カ月から数年で近接頬粘膜に扁平苔癬特有の粘膜症状が現れ、びらん型扁平苔癬の歯肉初発例と診断されたが、残り半数と斑点状の紅斑例は数年から10数年に渉って病変が歯肉に限局しており、基礎疾患の確定診断は難しかった。これに対して、剥離性びらんに偽膜や水疱形成を伴う例は初発後数カ月以内で歯肉以外にも病変が現れるのが特徴であり、水疱性粘膜疾患であることが判明した。鑑別診断に際して病変が口腔粘膜領域に生じている際には、免疫病理学的検索が参考となったが、歯肉に限局している際には検索所見に多様性がみられた。通常の歯周治療は病変の消長には特に関連がなく、ステロイド含有軟膏の局所貼薬は症状の軽減に有効であった。また、水疱性粘膜疾患の症状増悪期にはステロイドの全身投薬が効果的であった。一方、びらん型扁平苔癬の歯肉初発例や斑点状の病変例では、歯肉移植による病変部組織の置換が病変の改善には有効であった。尋常性天疱瘡は皮膚病変の改善に伴って口腔粘膜や歯肉の病変も完治したのに対して、びらん型扁平苔癬例では歯肉病変の完治は得難く、改善と再発も繰り返していた。また、斑点状の歯肉病変例では臨床症状が改善例している例が多かった。今後は角化とホルモンとの関連、鑑別診断に有用な遺伝子検索、抗ハンセン病治療薬の臨床応用などに目を向ける必要があると思われる。
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