最近我々は、新付着形成膜材料としてセメント質粒子複合化ゼラチン膜を開発し、この膜がセメント質形成能ならびに根面への骨細胞付着抑制能を有することを明らかにした。そこで本研究では、人工歯根へのセメント質粒子ハイブリッドがインプラント周囲に歯根膜組織を形成させ得るかその可能性を追及した。 実験には2頭の成猿を用いた。インプラント植立部を確保するため、サルの上下顎左右第1、第2小臼歯ならびに第1大臼歯を抜去した。3カ月後に、3種類の濃度のセメント質粒子ハイブリッドしたハイドロオキシアパタイト(HA)歯根(2-step typeアパセラム^<(R)>人工歯根:歯根部と支台部が別々となったインプラント体)3本と無処置のHA歯根1本を各部に埋入した。術後12週に、同サルを屠殺、インプラント体を含む組織の非脱灰研磨標本を作製した。そして同切片に、ヘマトキシリン・エオジン染色を施し、組織学的観察を行った。その結果、セメント質粒子をハイブリッドさせなかったHA歯根では、新生骨が歯根に直接接するアンキロ-シス部が多くみられた。一方、セメント質粒子ハイブリッドHA歯根では、アンキロ-シスはみられず、新生骨とインプラント間に一定の幅(約0.2mm)を有した血管を伴った線維性結合組織がみられた。この組織内の線維、細胞の配列方向は、歯根長軸に対して並行であったが、インプラント体表面の一部には、蛋白合成活性の活発な細胞とセメント質様物質の沈着がみられた。 以上の所見から、セメント質粒子ハイブリッドインプラントは新生セメント質の形成を伴った歯根膜組織を形成する可能性の高いことが示唆された。
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