本研究は従来からの単純な冠、橋義歯、床義歯、等の補綴的処置によっては改善不可能な状態に至るまで咬合が崩壊し、咬合平面が存在せず、咬合高径の病理学的な低減を伴う症例に対して従来の固定性冠橋義歯とハイブリットデンチャー形式によるプロビジョナルデンチャーによる咬合治療を行い、臨床経過を観察しながら術者、患者両者の十分満足が得られた時点で同高径によるハイブリットデンチャーによる咬合再構成を行い。同症例の術前、術後における機能筋群、下顎運動の様相を著者の開発した補綴処置効果判定システムにより臨床的に比較検討し、解析を行い、その研究成果の一部は第90回日本補綴歯科学会、および第一回International College of Prosthodontists Asian Divisionにて報告した。現在これらの症例を追加するとともに、これらの経過を観察中であるが現段階として以下の結論を得たので報告する。 i)プロビジョナルデンチャーの使用し咬合平面の再構成、咬合高径の挙上を行うことにより咀嚼筋群の筋活動が著しく増加し、筋間相互の協調性も向上することが分かった。 ii)またこのプロビジョナルが安定した状態の咬合高径、と咬合平面を再現しハイブリットデンチャーと固定性橋義歯とによるオーラルリハビリテーションを完成した場合、臨床的に確実に、機能的にも、さらに審美的にも良好な結果が得られ、筋電図学的にも術前の状態に比較し著しい活性化を示すことが分かった。 iii)また機能運動の律動性も術前に比較し術後には著しく向上していた。 iv)特にタッピングによる筋活動、律動性、筋間の協調性等は日常臨床で極めて把握しやすい事象で、このデーターが臨床的な咬合状態と筋電図学的な様相を予測可能と考えられる。
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