研究概要 |
歯冠修復後の口腔内を明るく保ちたいという審美的な要求の高まりに伴い,咬合面を歯冠色のポーセレンやコンポジットレジンで修復するケースが増加している。しかしながら,現在用いられているポーセレンは硬すぎて対合歯を損ない,コンポジットレジンは耐摩耗性の不足に加えて,多量に含まれている無機質フィラーによる対合歯の摩耗が指摘されている。3年間の予定で始めた本研究の目的は,こうしたポーセレンとコンポジットレジンの欠点を相互に補完し合い,対合歯を損なうことなく,咬合力を歯列上に分散でき,かつ審美的な咬合面を持つ歯冠補綴物を考案しようとするものである。 2年目の平成6年度は,前年度に決定した組成のセラミックス・レジン複合体を新型の咬耗試験機で試験した。これは充填物の経時的な口腔内摩耗を再現できる装置を,歯冠補綴物の咬耗を測定できるよう改良したものであり,本研究の目的に合致することができ,その成果の一部をQuintessence international誌(1994年)に発表した。さらに,歯冠補綴物を支台歯に接着する際に不可欠な接着性レジンセメントやカップリング剤などについても研究を行い,それぞれJ.Dent.(1994年)とJ.Prosthet Dent(1994年)に発表した。これらを用いて製作し,装着されたクラウンの,口腔内での咬耗状態を調べるために,咬合圧測定システム・オクルーザーを購入した。当初は,直ちに臨床経過を追って測定する予定であったが,安定した数値を再現性よく得るには,術者の熟練と装置の一部改良が要ることがわかり,結果的には30%の精度アップを成し遂げることができた。臨床ケースは始めたばかりであり,次年度も引続いて行う予定である。
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