研究課題/領域番号 |
05454537
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
木村 博人 弘前大学, 医学部, 助教授 (90142851)
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研究分担者 |
小林 恒 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (50234860)
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キーワード | 顎嚢胞 / 骨吸収 / メカニカルストレス / 嚢胞腔内圧 / レーザードップラー血流計 / 過酸化脂質 / シッフ塩基染色法 / 骨吸収因子 |
研究概要 |
顎骨の病的吸収機序を解明するため、本年度は嚢胞腔の内圧の測定と嚢胞壁組織血流量の計測及び過酸化脂質生成について臨床的試料に基づき検討を行った。その結果、1.顎嚢胞性疾患を対象とし嚢胞腔内圧測定を施行し得た。また、内容液の膠質浸透圧も測定した結果、嚢胞腔の内圧は平均20mmHg前後の値が得られ、顎嚢胞腔の内圧と内容液膠質浸透圧の間には正の相関が認められた。しかし、嚢胞腔内圧測定は症例によりデータのばらつきが多いため、今後さらに症例数を重ねて継続的に測定を行う必要があるものと思われた。2.嚢胞壁組織の血行動態の解析は骨吸収が高度で歯槽粘膜と嚢胞壁が隣接している症例を選択し、レーザードップラー血流計により非観血的に嚢胞壁組織の血流量の測定を試みた。その結果、嚢胞壁組織の血流量は健常組織に比べ低下していることが明らかにされた。3.現有の高速液体クロマトグラフィー、化学発光検出システムを用いて、手術的に摘出した嚢胞壁組織より過酸化脂質を検出、定量し得た。本法で測定された過酸化脂質は細胞膜燐脂質の主成分であるフォスファチジルコリンのヒドロペルオキシドであり、嚢胞壁組織障害の指標となるものと思われた。4.シッフ塩基染色法を用いて、手術的に摘出した嚢胞壁を試料とし、嚢胞壁組織中の過酸化脂質とその局在を組織化学的に光学顕微鏡で観察し得た。 以上の研究結果より、顎骨の病的吸収機序に関連して、嚢胞壁組織の微小循環障害と過酸化脂質生成の関わりが明らかにされた。このことは嚢胞壁組織に加わるメカニカルストレスと骨吸収因子生成機構の解明に研究を伸展していく端緒になるものと考える。一方、嚢胞壁組織中に生成される各種骨吸収因子(IL-1βおよびPGE_2)の測定法が確立されつつあり、引き続き検討する予定である。
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