研究概要 |
顎骨嚢胞性疾患における骨破壊にIL-1に代表されるサイトカインの役割を検索した。まず、予備実験として、ラットを用いIL-1を機械的刺激により産生するとされている関節頭部軟骨を種々の条件下に免疫染色し、手技を確立した。顎骨嚢胞生疾患30例の嚢胞内容液中のIL-1,TNF,IL-6の濃度を測定し、単純性骨嚢胞ではIL-1の濃度は他の疾患に比し有意に低く、IL-1の関与は否定されたがIL-6およびTNFの関与が示唆された。アメロブラストーマではIL-1betaが有意に高濃度でIL-1alphaの関与は否定された。免疫組織学的検索では、嚢胞上皮、上皮直下の結合組織および骨に接する結合組織にIL-1betaの局在が認められ、IL-1alphaは認められなかった。よって、顎骨嚢胞性疾患の骨破壊には主としてIL-1beta,IL-16,TNFが関与している事が示唆された。これらのサイトカインが骨破壊の主役である破骨細胞にどの様に作用するかをラットの骨髄分離破骨細胞を用いてin vitroにパッチクランプ方にて検索した。分離破骨細胞の膜には2種類のKチャンネルが存在し、その特性に付いては1993年英国で行われた国際生理学会で発表した。このKチャンネルを指標に各種サイトカインの効果を検索中である。現在までの所、骨非存在下ではサイトカインはチャンネルに影響を及ぼさない事が示唆された。近々、骨存在下での検索を進める予定である。
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