研究概要 |
口腔外科症例について術後呼吸管理に関するアンケート調査を全国歯科大学に対して行い、本学歯学部付属病院での現況と比較検討した。その結果,我々の施設も含め術後呼吸不全や無気肺,肺炎などの呼吸器合併症を経験した施設が散見され,歯科麻酔領域においても術後の呼吸管理に配慮をする必要があることを指摘した(日歯麻誌,1993,21(3),391〜398.). また、当施設における麻酔時間10時間以上の症例を対象とし,術後肺合併症の発生の予測と予防について術後肺合併症予測のスコアを用いて検討した.その結果,このような症例では術後気管内挿管による気道確保を行い、術後最低24時間は予防的人工呼吸が適応であると考えられた.特に60歳以上,またはスコア7点以上では術後予防的人工呼吸は必須と思われた.さらに、即時再建術を行った場合は術後の呼吸状態に十分注意を払うべきと考えられた(日歯麻誌,1994,22(4),627-636.). そこで、口腔外科手術予定患者を対象として呼吸モニタ(IMI,カプノマックウルティマ;本補助にて購入)を用いて術前、麻酔覚醒後,術後1日目の換気量を比較した.その結果術後の1回換気量は,麻酔時間5時間以内の健康成人では術前に比べて有意な変化はみられなかったが、高齢者や麻酔時間10時間以上の患者では覚醒時に低下し、術後1日目はさらに低下した.以上より,高齢者や長時間麻酔後患者では術後の呼吸予備力が減少し,術後予防的人工呼吸の適応の対象となることを裏付けた(第22回日本歯科麻酔学会総会,1994.10). 現在,さらに症例を加え口腔外科領域の長時間手術後の予防的人工呼吸の適応基準を検討中である.
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