研究概要 |
痛覚のモデル動物を作成し、発痛時の各受容体の発現動態や三叉神経系での特異的なプローブを用いて検索した。 ホルマリン顔面部片側注入により片側疼痛モデル動物を作成後、1〜48時間後および7日後の三叉神経節や脳を取り出し組織切片を作成しアミノ酸需要体の核酸プローブを合成しinsituhybridization法を行った。その結果、痛覚刺激によって受容体の産生能は、変化しないことがわかった。 また、三叉神経節での抑制性アミノ酸受容体(GABA_A receptor)のサブユニットの共存についても検索を行った結果、三叉神経節細胞においてγ1、γ2サブユニットが約75%の細胞で共存していた。このことにより、三叉神経の知覚を司る神経細胞は、γ-aminobutyric acid(GABA)の入力を受けていることが示唆された。 さらに、三叉神経痛覚伝導二次路である三叉神経脊髄路核尾側核(TNC)の視床後内側腹側核(VPM)へ投射しているニューロンがどんな入力をうけているかを検索した。その結果、VPMへ投射しているニューロンは、TNCの辺縁層に多く認められ、この投射ニューロンは、GABA_Areceptorγ1サブユニット抗体に対し陽性を示し、投射ニューロンもGABA入力を受けている可能性が示唆された。 以上より三叉神経系の知覚伝導路の一次及び二次経路の間でGABAを有する介在ニューロンによる情報修飾が行われていることが示唆された。 一方、上記のモデルを用いて疼痛時に発現する未知の(あるいは既知の)遺伝子の検索も分子生物学的手法(Differencial Display法)によって行っている。発痛時の三叉神経節より総RNAを抽出,精製しPCR法にて増幅し電気泳動にて展開した。その結果5本のバンドを回収し,現在insituhybridization法によりスクリーニングを行うと同時に塩基配列を決定中である。
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