研究概要 |
骨塩量が下顎成長段階を知るための有効な指標になりうるのではないかと考え、MD法を改良したcomputed X-ray densitometry(CXD)法について検討を行った。資料として初検査時6歳から19歳までの女子199名,男子68名,計267名の1年間隔で縦断的に撮影された各対象者2〜3枚の側面頭部X線規格写真,アルミニウム階段入り手部X線写真および同時期に計測された身長値を用いた。これらの計測値により骨塩量や下顎骨の年間変化量を求めて検討を行った。 その結果,1.骨塩量ΣGS/Dは第二手骨長・骨幅や身長の増加ピークに約2年遅れてピークを示した。2.思春期において下顎骨全体長の増加量は,身長,ΣGS/D,第二中手骨骨幅・骨長と正の有意な相関を示した。3.顔面形態と骨塩量とに一定の関係を見出すことはできなかった。4.思春期において下顎骨全体長の年間増加量は,女子では初検査時の身長,ΣGS/D,MIC,第二中手骨長と,男子ではΣGS/Dと負の有意な相関を示した。しかし,思春期性成長ピーク前では有意な相関を示す項目はなかった。5.CXD法各パラメータを説明変数として重回帰分析を行った場合,女子に比べて男子では思春期後期で重相関係数0.7〜0.9の高い値を示していた。6.得られた重回帰式を下顎骨全体長の年間増加量の予測に当てはめた場合の誤差は女子では0.5〜1.0mm,男子では1.0〜2.0mm程度であった。 以上のことから,CXD法による骨塩量の測定は下顎骨成長予測への可能性を示すものとして注目される。特に,思春期性成長ピークを過ぎた思春期後期においては個体の成熟段階の評価や顎骨の予測に,従来より試みられてきた身長増加様相や手骨の骨化イベントの評価では得られない情報を含んだ成熟度指標と考えられた。また,CXD法を発展させ,パーソナル・コンピュータを用いた骨塩量解析システムについても考案した。
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