研究概要 |
近年、歯周炎はいくつかの特異的な細菌で惹起される感染症であるという認識が強まりつつある。本研究では、歯周炎の予防や診断、治療のために歯周病細菌に対する抗体価を迅速かつ特異的に測定する方法の開発を目指した。前年度において、若年性歯周炎の病原菌として知られるActinobacillus actinomycetemcomitansの各血清型代表株から血清型特異多糖抗原(SPA)を抽出、精製した。そこで、本年度はこれらの精製SPAをcyanogen bromideで活性化したあと、adipic acid dihydrodideと反応させアミノ基を付与した。このアミノ基を付与した多糖抗原にビオチンをcarbodiimide法により結合した。アビジン処理したエライサプレートをこれらのビオチン化SPAでコートした。このアビジン-ビオチン反応を利用したエライサ法はきわめて特異性が高いことが、各血清型代表株に特異的なウサギ抗血清を用いた研究により明らかになった。さらに、A.actinomycetemcomitansに感染した歯周炎患者血清中のSPA特異抗体価を本法により測定したところ、きわめて特異性と感度が高いことが明らかになった。たとえば、6,400-12,800倍希釈した血清中の抗体価を測定することも可能であった。そこで、本法は歯周病の診断や歯周病細菌の多糖抗原の病因論上の役割の解明に寄与するものと考えられる。なお、現在成人性歯周炎の病理菌として注目されているPorphyromonas gingivalisの多糖抗原の抽出、精製も終了し、同抗原を用いたエライサ法を開発中である。
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