研究概要 |
1.マイトトキシン(MTX)の作用を非興奮性細胞であるウサギ血小板を用いて検討した.MTXは用量依存的かつ外液カルシウム依存的に血小板凝集,ATP放出並びに形態変化を引き起こした.この作用は電位依存性カルシウムチャネル阻害薬であるベラパミル,ニフェジピンによって阻害されなかったが,プロカインは凝集速度を低下させた.また走査型電子顕微鏡でMTXによる血小板活性化時の形態を観察したところ,血小板に存在するトロンボキサンA2受容体を刺激した活性化時に見られるものとはその形態を異にしていた.一方,ヒトアストロサイトーマ細胞を用いてMTXによるホスホリパーゼC活性化を検討した.MTXはホスホリパーゼCを極めて強く活性化し,受容体刺激による活性化の3倍以上の効力を示した.MTXによるホスホリパーゼC活性化は外液カルシウムに依存しており,また受容体作動性カルシウムチャネル遮断薬のSK&F96365によって抑制を受けた.これらの結果は,非興奮性細胞においてもMTXが作用を示す様なカルシウムチャネルが存在することを示しており,その実態の解明が望まれる. 2.ズーザンテラトキシンB(ZT-B)の作用をウサギ大動脈平滑筋を用いて検討した.ZT-Bは用量依存的かつ外液カルシウム依存的に平滑筋を強く収縮させた.しかし,その作用はMTXとは異なり,ベラパミルやニフェジピンによって一部抑制を受けた.従って,ZT-Bの作用発現には電位依存性カルシウムチャネルを介したカルシウム流入が関与していることが示された.またZT-Bにより細胞内ナトリウムの増加とカリウムの減少が起きた.この変化がZT-Bによる平滑筋収縮に果たす役割は明らかではないが,ZT-Bの作用がNa/K-ATPase阻害剤であるウアバインによって増強されることを考え併せると,これらイオンの変化がZT-Bの作用発現に何らかの寄与を持つものと思われる.今後細胞内カチオンと収縮力の同時測定を用いて更に検討を加える予定である. 3.ユージストミン類は海産動物ホヤから単離したカルボリン骨格を持つ一連の化合物であるが,抗腫瘍及び抗ウイルス活性を示した.現在その作用と構造活性との相関について解析を行なっている.
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