研究概要 |
マイトトキシン(MTX)の作用を非興奮性細胞であるウサギ血小板およびヒトアストロサイトーマを用いて検討した。MTXの作用の特徴は外液カルシウム依存的であることであり,カルシウムチャネルの開口とともに,ホスホリパーゼC(PLC)の活性化をもたらした。ヒトアストロサイトーマ細胞を用いて.MTXによるPLC活性化機構を詳細に検討した。MTXによるPLC活性化は受容体刺激による活性化の3倍以上の効力を示し,MTXはPLCの極めて強い活性化薬といえる。一方,MTXによるPLC活性化は細胞内カルシウムキレーターであるBAPTAによって影響を受けず,細胞内へのカルシウム流入とは別の経路で起こることが明らかになった。さらに,チロシンキナーゼ阻害薬であるゲニステインによって抑制されることから,PLC活性化にはチロシンキナーゼの介在が想定される。以上の結果は非興奮性細胞でもMTXの結合部位が存在することを示しており,その実態の解明が望まれる。 ユ-ジストミン類は海産動物ホヤから単離したカルボリン骨格を持つ一連の化合物であるが,カフェイン様の小胞体からのカルシウム遊離を引き起こす。このユ-ジストミンをリ-ド化合物として合成されたメチルベッドおよびその類縁体がカルシウム遊離を修飾するとともに生体のいくつかの臓器に結合活性を持つことが明らかになった。 ズ-ザンテラトキシンA(ZT-A)は血管収縮を引き起こす海洋微生物由来の活性物質であるが,その血小板機能に対する作用を検討した。ZT-Aは強力に血小板凝集を惹起したが,その凝集は外液カルシウム依存的でありMTXと類似した。しかし,シクロオキシゲナーゼ阻害薬のインドメタシンあるいはトロンボキサンA_2(TXA_2)受容体阻害薬であるSQ29548によってZT-Aによる凝集は強く阻害され,ZT-Aはアラキドン酸カスケードを活性化する結果TXA_2の生成を介して血小板凝集を惹起していることが明らかになった。ZT-Aによるアラキドン酸カスケード活性化機構について現在検討中であり,チロシンキナーゼおよびマップキナーゼの介在が想定される。
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