ブレオマイシン(BLM)はDNAを切断する機能を持っている。ところが、BLM生産菌由来のBLM耐性遺伝子(blmA)を導入した大腸菌は、BLM存在下で培養されるときに限り、新たに、分子量3万の蛋白質を大量に産生することを発見した。この現象は、(1)BLMを感知して発現する蛋白質(BLMセンサー蛋白質)が存在すること、(2)BLMがDNA切断機能以外に、特定遺伝子の発現をインデュースする機能を有することを意味している。本研究では、(1)センサー蛋白質の単離とそのN末端アミノ酸配列の決定;(2)センサー蛋白質遺伝子のクローニングとそのDNA塩基配列の決定;(3)BLMセンサー蛋白質の機能解析;(4)BLMによるセンサー蛋白質誘導機構の解明を目的として実験を行い、これ迄に以下の成果を得た。 BLMにより発現誘導される蛋白質(BLMセンサー蛋白質)を二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動法にて精製後、ペプチドシークエンサーを用いて本蛋白質のN-末端アミノ酸配列を決定した。その結果、BLMセンサー蛋白質のアミノ酸配列は、His-Pro-Glu-Thr-Leu-Val-Lys-Val-Lys-Asp-Ala-Glu-Asp-Gln-Leu-Gly-Ala-Arg-Val-Gly-Tyr-Ile-Gluであった。「NBRF」Databaseにより、ホモロジー検索を行ったところ、大腸菌のβ-ラクタマーゼの前駆体のアミノ酸配列と完全に一致した。このように、平成5年度までに、BLMセンサー蛋白質の正体をβ-ラクタマーゼであると同定した。
|