研究代表者は、最近、ブレオマイシン(Bm)生産菌由来の耐性遺伝子blmAをpUC系プラスミドに連結したプラスミド(p181EB1)を得た。興味深い現象として、p181EB1を保有する大腸菌をBm存在下で培養すると、その細胞内に分子量約3万の蛋白質が過剰生産されることを発見した。これは、Bmが特定遺伝子の発現を誘導する機能を持つこと、及び、Bmを感知して発現する蛋白質(Bmセンサー蛋白質)の存在することを意味する。本研究を遂行した結果、平成5年度には、分子量3万のBmセンサー蛋白質がpUC系プラスミド中にコードされるβ-ラクタマーゼであることを明らかにした。そこで、平成6年度は、Bmによるこのセンサー蛋白質遺伝子の誘導(あるいは活性化)機構を解析すると共に、センサー蛋白質遺伝子のプロモーターを利用したインテリジェントベクターの構築に力を注いだ。その成果として、(1)センサー蛋白質遺伝子の転写は、無添加に比べ、Bm添加において非常に高まること。(2)その転写の活性化にはblmA遺伝子の存在が必要であること。(3)blmA遺伝子産物の役割を知るための最初のステップとして本遺伝子産物の精製を行い、本産物がBm結合蛋白質であることなどを明らかにした。次に、最近開発した放線菌由来のメラニン色素産生遺伝子をレポーター遺伝子としたプロモーター検索用ベクター(大腸菌で使用可能)にセンサー蛋白質遺伝子のプロモーターを挿入し、かつ、blmA遺伝子を配置することを試みた。得られたキメラプラスミド(インテリジェントベクター)を導入された大腸菌は、Bm存在下で黒色のメラニン色素を産生した。
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