研究概要 |
1.ニワトリ、牛及び豚脾臓リボヌクレアーゼについて構造研究を行った結果、これら酵素のいずれもが精製途中でプロテアーゼによる修飾を受けているため、C-末端20残基及びN-末端40残基ほどの点で部分的切断があり、これら断片がS-S結合により酵素本体に結合していることが明らかとなったので、精製過程にプロテアーゼ阻害剤を入れたが、なおこの修飾を防ぐことができなかった。従って今年度はこれらの酵素の本体と修飾断片を別個に構造決定を行った。豚脾臓酵素についてはほぼその構造を明らかにした。また、牛脾臓リボヌクレアーゼについては約80%の構造が明らかとなり、高等動物のN-末端部分が下等動物、植物のものとかなり異なることを明らかにした。 2.リボヌクレアーゼRh(RNase Rh)の反応機構については次のことが明らかとなった。RNase Rhの塩基認識部位を構成するAsp51が植物、動物の類似酵素ではしばしばGlu,Ser,Asn等に置換されている。これを倣いRNase RhのAsp51の置換体を作成したところ、植物の酵素に類似したグアニル酸優先性を獲得した。この実験は51位の側鎖が塩基特異性を支配していることを示している。RNase Rhとその類似酵素中ではLys108が活性中心近傍にあり、かなり保存されているが、ときにはArg,Thr等に置き換わっている。このLys108のLeu置換体は活性が3%程度に下がり、酵素のKm値は変わらず活性のみが減少する。またThr,Ser等の置換体は10%程度の活性を示すことから108位にLys,Thr等の水素供与体があることが活性の発現に重要であることを示した。これらの実験を組み合わせ、His46,His109を一般酸塩基触媒とし、His104をリン酸結合部位、Lys108,Glu105を反応中間体の安定化に役立つものとし、Asp51,Tyr57,Trp49,Phe101を塩基認識部位とする反応機構の仮説を提出した。
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