研究概要 |
1.塩基非特異的リボヌクレアーゼ(RNasae T2 family RNase)に属する種々の起原の酵素(ウスバタケ、カキ、牛脾臓、ウシガエル肝、イカ肝、ニワトリ肝)について一次構造の解明を試み、前4者については全構造を後2者については大半の構造を決定した。何れの酵素についても活性中心を構成するアミノ酸残基は2箇所の短いペプチド鎖中に集中しており一種のカセット状になっている。これらの酵素中動物由来の酵素のN-末端付近の配列及びCys残基の位置は真菌の酵素と異なり、むしろ植物の酵素に似た配列を示しRNase T2 family酵素の分子進化の筋道を示している。2.RNase RhのX線結晶解析をRNase Rh-2′-AMP及び-d(ApC)複合体について行ったところB1部位はTyr57とTrp49の間にスタッキングしており、Asp51が直接塩基と水素結合していることがわかった。またB2部位に関してPhe101が塩基とスタッキングしておりその他にGln95等が一種の蓋の様に働いている事も明らかとなった。またLys108がリン酸基に近接している場合があることも分かった。3.真菌由来のRNase Rhの活性中心及び塩基認識部位のアミノ酸残基の改変により、各アミノ酸残基の役割の推定を行った。Lys108はLeuに置換すると活性を失う。Ang,Thr,Ser等のプロトン供与能を持った残基への置換は能率は減少するがLys108の代わりとなった。Asp51はGlu,Gln,Asn等に置換することで塩基優先性がアデニンからグアニンに変わる。この事はAsp51がRNase Rhのアデニン塩基優先性に極めて重要であることを示している。塩基認識部位のTyr57は必ずしも芳香環である必要はないが芳香環である方が触媒能が高い。Trp49は活性中心の構造を維持するために必須であり、この改変は活性を極端に減少させる。4.トマトのRNase LEを酵母で発現させることが出来、結晶化にも成功している。現在X線結晶解析中である。近く植物酵素と真菌酵素の差異を明らかにしうると考える。
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