研究課題/領域番号 |
05454576
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 和夫 千葉大学, 薬学部, 教授 (90109918)
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研究分担者 |
小泉 利明 千葉大学, 薬学部, 助手 (80110344)
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キーワード | 銅 / アルブミン / メタロチオネイン / テトラチオモリブデート / メンケス病 / ウイルソン病 / LECラット / 先天的代謝異常 |
研究概要 |
2年度にわたる本研究計画の内、平成5年度の研究計画では1)血流中の金属輸送蛋白質アルブミンへの金属の結合様式と金属輸送機構の解明と、2)血流から肝臓への金属の識別的取り込みとその機構の解明、に2大別されるアプローチを計画通りに実施に移した。しかし、本年度になり、生体による銅の制御機構に関して画期的ともいえる研究成果が相次いで報告され、それに伴う研究計画の見直しをする必要があった。 1)に関してはメルカプトアルブミンへの銅の選択的結合によってアルブミンのコンフォメーションの変化が起こることを、反応に関与するカルシウムの代わりに同族金属あるいは拮抗金属である希土類金属による反応や、関与するアミノ酸の官能基の選択性によって明かにした。 2)に関しては先天的な銅代謝異常に起因するメンケス病とウイルソン病の発生機構に関する研究成果が相次いでだされた。細胞からの銅の排出に関与する銅依存性のATPaseの遺伝子に異常が起こることにより、細胞からの銅の排出が障害されることが銅の異常蓄積の原因であることが指摘された。我々はこの可能性とメタロチオネインの遺伝子発現の昂進による可能性の両面から機構の解明に取り組んできた。報告された論文からは後者の可能性は少なくなったとはいえ、我々の実験データは後者の可能性を支持する結果も得られている。即ち、銅代謝異常動物であるLECラットから銅を選択的に除去してメタロチオネインやそのmRNAを正常動物と同じレベルにまで下げても、核内の銅に選択的な制御蛋白質のレベルは下がらないことなどが明かとなった。 一方、我々は、代謝異常によって蓄積した銅を選択的に除去できる可能性を示してきたが、その機構を明かにするための研究をさらに発展させた。即ち、モリブデン錯体であるテトラチオモリブデートがメタロチオネインのチオール基と結合している銅に架橋的に結合することによる新たな選択的除去機構を提出した。
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