研究概要 |
エイコサペンタエン酸(EPA)由来の3型PGの超微量定量法の開発及び定量値と疾患との関連性の解明を目的として以下の検討を行った。まず、トロンボキサンに関して、これまで報告のない3型のTXA_3の超微量定量法の確立のために、新規なメチルエステル(ME)-プロピルアミド(PA)-ジメチルイソプロピルシリル(DMIPS)エーテル誘導体を用いたTXA_3の尿中安定代謝産物11-dehydro-TXB_2の超微量定量法を開発した。次に、健常人及び糖尿病患者尿中の含量を測定し、そのトロンボキサン産生量の変化について検討した。さらに、同誘導体化法と、新規に調製した^<18>O標識11-dehydro-TXB_3を内部標準物質として用いた、11-dehydro-TXB_3の超微量定量法を開発した。また3型のプロスタサイクリンに関して、血中の安定代謝物であるΔ^<17>-6-keto-PGF1_αのME-メトオキシム(MO)-DMIPSエーテル誘導体を用いた超微量定量法を確立し、血管障害と血栓性疾患を合併症とする糖尿病の患者血中のプロスタサイクリン含量を精査し、合併症発症とプロスタサイクリンとの関連性について評価した。また、同化合物の尿中安定代謝産物Δ^<17>-2,3-dinor-6-keto-PGF1_αの標品を生物変換法にて調製し、その微量定量法の検討を行った。 健常人及び糖尿病患者の試料中の含量の検討から、糖尿病患者において、トロンボキサンの産生量の増加とプロスタサイクリンの産生量の減少が認められた。合併症として血栓性の疾患を併発する病態において、トロンボキサンとプロスタサイクリンのバランスが重要な働きをしていることが推察された。また、EPA服用患者のプロスタサイクリン含量の健常人レベルへの回復傾向が認められ、EPAの合併症予防効果も期待された。
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