高血圧発症の遺伝的背景とその新しい治療薬に関する研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454581
• 研究機関: 北里大学
• 研究代表者: 鹿取 信 北里大学, 医学部, 教授 (50050365)
• 研究分担者: 大野 隆 北里大学, 医学部, 助手 (60185345) ; 畑中 公 北里大学, 医学部, 助手 (00228470) ; 川村 道子 北里大学, 医学部, 助手 (00154104) ; 馬嶋 正隆 北里大学, 医学部, 講師 (70181641) ; 原田 芳照 北里大学, 医学部, 助教授 (20050677)
• キーワード: キニノゲン欠損ラット / アンギオテンシンII / 食塩による高血圧発症 / アルドステロン / スピロノラクトン / ポストスタチン / キニナーゼ / カルボキシペプチダーゼY

研究概要

先天的キニノゲン欠損ラットBN-Katholiek(BN-Ka)はキニンをほとんど産生することは出来ない。本研究の目的はこのBN-Kaラットを用いて高血圧発症の腎カリクレイン-キニン系の役割を調べることにある。
1.低食塩負荷による高血圧発症:正常のBN-Kitasato(BN-Ki)ラットに2%食塩を含む食餌を与えても血圧上昇はないが、欠損BN-Kaラットに与えると高血圧を生じる。欠損BN-Kaラットは正常BN-Kaラットに比べて尿中Na排泄量が少なく、水分摂取量、排泄量共に少ない。その結果、血清中Naが上昇し赤血球内Na量も有意に増大する。欠損BN-Kaラットにキニノゲンを持続投与すると、尿キニン産生、尿量Na排泄量増大と共に全身血圧も正常に戻る。赤血球内Na量も著しく減少する(Hypertension,22:705-714、1993)。
2.正常BN-Kiラットの血圧を上昇させない量(20% mug/day/rat)のアンギオテンシンIIを欠損BN-Kaラット皮下に持続注入すると、全身血圧は上昇し、血清、脳脊髄液、及び赤血球内のNa濃度が上昇した。アルドステロン括抗薬のスピロノラクトン皮下持続注射により、全身血圧上昇、心拍数増大、脳脊髄液、及び赤血球内Na増大がすべて正常に戻った。このことはアンギオテンシンはより低濃度で副腎よりアルドステロンを分泌させ、Naの体内貯留をおこしていることを示している。事実アンギオテンシンII持続注入により尿中のアルドステロン排泄量は増大したが、BN-Ka,BN-Kiラットで差はなかった(Hypertension in press)。
3.ラット尿のブラジキニン分解経路:ラット尿によるブラジキニン分解は血漿と全く異なり、neutral endopeptidase及びcarboxypeptidase Y-like exopeptidaseの二つによってなされ(Biomed.Res.,14;191-201,1993)、その阻害薬のpoststatinも見出された(Eur.J.Pharmacol.232:181-190,1993)。Poststationは DOCA-salt-高血圧ラットの血圧を下降させる。

研究成果

• [文献書誌] M.Hashimoto,et al.: "Immediate inhibitory effect of methylprednisolone suleptanate (U-67590A)on antigen-induced cutaneous and airway anaphylactic in guinea-pigs." Br.J.Phamacol.108. 604-612 (1993)
• [文献書誌] M,Majima,et al.: "Detection of the degradation products of bradykinin by enzyme immunoassays as markers for the release of kinin in vivo." Biochemical Pharmacology. 45. 559-567 (1993)
• [文献書誌] M.Majima,et al.: "Poststatin a novel inhibitor of braykinin-degrading enzymes in rat urine." Eur.L.Pharmacol.232. 181-190 (1993)
• [文献書誌] M.Majima,et al.: "High sensitivity to salt in kininogen-deficient Brown Norway Katholiek rats." Hypertension. 22. 705-714 (1993)
• [文献書誌] M.Katori,et al.: "Natriuretic role of the urinary kallikrein-kinin systems in the development of hypertension in rats." Asia Pacific J.Pharmacol.8 suppl.2. s20 (1993)
• [文献書誌] M.Kawamura,et al.: "Activation of phospholiopase C as a promary target of the thromboxane A_2-mediated amplification mechanism in thrombin-induced rabbit platelet activation." Platelets. 5. 20-28 (1994)
• [文献書誌] 鹿取 信: "「アレルギー性炎症」 総論・アレルギー性炎症の概念と考え方(監修-牧野莊平)" (株)メディカルレビュー社, 10-19 (1993)
• [文献書誌] 鹿取 信: "「キニンとアンギオテンシン」 I.序章、V.l.l総論 (監修-松尾寿之、鹿取 信)(編-大石幸子、加藤久雄、三宅可浩)" (株)講談社サイエンティフィク, 1-8,104-110 (1994)