研究概要 |
アルツハイマー型老年性痴呆の実験動物モデルとしてアセチルコリン神経の機能低下に由来するスコポラミン誘発健忘マウスに及ぼすダイノルフィンの作用を自発的交替行動および受動的回避学習を用いて検討し,以下の地検を得た. 1.自発的交替行動に及ぼすダイノルフィンA-(1-13)の効果 (1)ダイノルフィンA-(1-13)は正常マウスの自発的交替行動にほとんど影響しなかった. (2)ダイノルフィンA-(1-13)はスコポラミンで誘発される自発的交替行動の障害を有意に改善した. (3)スコポラミンで誘発される自発的交替行動の障害に対するダイノルフィンA-(1-13)の改善効果はカッパオピオイドアンタゴニストのノルビナルトルヒミンによって拮抗された. 2.受動的回避学習に及ぼすダイノルフィンA-(1-13)の効果 (1)ダイノルフィンA-(1-13)は正常マウスの受動的回避学習にほとんど影響しなかった. (2)ダイノルフィンA-(1-13)はスコポラミンで誘発される受動的回避学習の障害を有意に改善した. (3)スコポラミンで誘発される受動的回避学習の障害に対するダイノルフィンA-(1-13)の改善効果はカッパオピオイドアンタゴニストのMr2266によって拮抗された. 以上の結果より,ダイノルフィンはアセチルコリン神経の機能低下に由来する学習・記憶障害を改善させることから,アルツハイマー型老年性痴呆治療薬としての可能性が示唆される.現在,アミノ酸配列の異なるダイノルフィンフラグメントの動物健忘モデルに対する作用を検討中である.
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