これまでの経過から、乳酸脱水素酵素(LDE)サブユニット欠損症、およびコリンエステラーゼ変異については、検診および病院患者群を対象として浜松医科大学附属病院に構築されている病院総合医療情報システムおよび検査システム内に現在までにえられている遺伝性変異の特徴を抽出し、遺伝性変異の検索抽出システムを作成した。コリンエステラーゼ変異の抽出論理は比較的効率よく作動し、現在までに40例以上の変異が抽出されており、PCR-SSCP法を中心に既知の変異に対してはRFLPを組合せ、新たな変異では直接シークエンシングすることにより新たに3種の変異を加え8種の変異を解析することが出来た。このうち活性中心近傍のL330I変異と、G365R変異の2種の変異の頻度が比較的高く観察され、そのほかにk-変異も約17%と欧米に比して同等以上の頻度で観察されている。これらの変異はいずれも低活性を示す変異であり、臨床的に肝障害の指標として用いられる検査であることから、変異の存在を無視したコリンエステラーゼによる肝障害の評価は問題があることが示された。また、これらの検索システムを血栓症の遺伝的背景に高頻度に存在するプロテイン-Cの変異に対しても拡大していくことを試みている。 遺伝性変異の存在は、それ自体が疾患と密接に関連するものの他に、検査のピットホールとして重要な変異も含まれる。これらの変異が日常検査のデータの解析からハイリスク群が抽出されるようなシスツム構築を更に発展し、より効率よいシステムを確立することを続けたい。
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