非症候性であるが、状況によって重篤な臨床症状を呈するハイリスク性の遺伝性疾患を日常の診療で見いだすことは、検査医にとって重要な仕事である。詳細な日常検査データアの解析がこのような疾患の検出を可能とするが、確実な検出のためのルール、またはシステムは確立されていない。この研究課題は、これらの遺伝性変異の検出のアルゴリズムを確立し、日常検査における遺伝子異常に基ずく検査データの異常の診断・意志決定を支援するシステムを構築することである。 血清コリンエステラーゼ(BCho)の遺伝性変異を検出するルールは、効率よく作動することが確認された。このシステムで40例を越える遺伝性変異が検出された。この中には、新たに見いだされた変異が3例含まれている。この中でL300I、G365Rの二つの変異は、ともに日本に多い変異であることが確認され、さらにk-変異も欧米と頻度で差がないことが確認された。 乳酸脱水素酵素(LD)のサブユニット変異に対しては効率よいルールは、見いだされていないが、LDとクレアチンキナーゼ(CK)の関係を検索することで、変異が見いだされている。日本ではM-サブユニット変異で4種の遺伝子変異が我々を中心に解析されている。また、これに関連する国際会議で米国で2症例、イタリアで1症例が新たに報告された。 これらの症例の日常検査のデータと遺伝子変異の部位は、浜松医科大学の医療情報システムに蓄積されている。将来これらの情報は、ネットワークを介して国際的に利用可能とすることを計画している。
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