研究概要 |
本研究は、京都大学の卒業生を対象にライフスタイルが健康状態や寿命にどのような影響を与えるかを明らかにすることである。調査の対象年齢は35歳以上で5年齢幅毎に400名、計4,000名を無作為に抽出した。また、対照群として5都市(東京、名古屋、大阪、京都、福岡)に存在している一般市民7,000名を無作為抽出し、同様の調査を行った。調査方法は郵送による質問紙法であり、その内容はPaffenbarger,Jr.たち(1993)が用いた質問紙を基に修正したものである。主な内容は1)個人的記録、2)家族歴、3)健康、体力の状態、4)身体活動量、5)生活および健康習慣について39項目の質問から成り立っている。 調査の結果、京都大学卒業生(A群)から、992名(60歳未満で305名、60歳以上で687名)、一般市民(B群)からは739名(60歳未満418名、60歳以上321名)の解答を得た。まず、心疾患については、60歳以上の群で発症時の平均年齢は、A群で60.3歳、B群は59.7歳であり両群間に差はなかった。なお、60歳以上の心疾患発症率は、A群68.1%、B群54.9%であったが、80歳以上という高齢になると両群ともその発症率は21%と激減した。同じく60歳以上の高血圧の発症率についてみると、A群が29.6%、B群27.2%であり(有意差なし)、糖尿病は、それぞれ14.3%、8.6%で、前立腺肥大は5.3%、10.0%と有意差があった。また、胃潰瘍、十二指腸潰瘍はA群が多い傾向を示した。身体活動量については両群で差がなかった。さらに、60歳以上の両群の総有効回答数から週当たりの身体活動量が2000kcal以下の者の割合を分析すると、心疾患が75.0%、糖尿病と高血圧の合併症は80.0%と対照群と比較して高罹患率を示した。 体型指数変化を縦断的に(18、25、40、50、60歳頃)みると、心疾患あるいは糖尿病の既往歴を有するものは、対照群と比較して、有意(p<0.05)に肥満型への体型の移行が認められた。しかしながら、高血圧疾患では肥満型への体型の移行は認められなかった。
|