研究課題/領域番号 |
05454603
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉岡 崇仁 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助手 (50202396)
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研究分担者 |
芳賀 裕樹 滋賀県琵琶湖博物館, 準備室, 学芸技師(研究員)
永田 俊 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助手 (40183892)
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キーワード | 水圏 / 微生物食物連鎖 / 炭素・窒素循環 / ピコ植物プランクトン / 細菌 / 溶存態有機物 / 栄養塩回帰 / 安定同位体比 |
研究概要 |
前年度に引き続き、琵琶湖と木崎湖において、微生物食物連鎖が炭素・窒素循環駆動において果たしている役割に関する研究を展開した。前年度に得られたデータのより詳細な解析を進めるとともに、実験的解析を実施することにより、新たに以下の知見が得られた。 1)琵琶湖と木崎湖の沖帯におけるアンモニア回帰機構についての解析を進めた結果、微生物群集の活動のうち、バクテリアによる溶存有機窒素化合物の消費活性が極めて重要であることが示唆された。すなわち、調査水域において、バクテリアは、溶存有機物を粒子化し、捕食者群集にとっての餌資源を供給する働きと、アンモニアを直接放出する働きを同時に果たしており、それらの作用が、系内の窒素循環の制御に大きく関わっていることが明らかにされた。 2)以上のことから、バクテリアによる溶存有機窒素の利用を明らかにすることが最も重要な課題としてクローズアップされた。そこで、溶存有機窒素化合物の大きな部分を占める溶存遊離・結合型アミノ酸の濃度の測定方法の検討と、その利用活性に関する研究を展開した。その結果、琵琶湖において、細菌の細胞外酵素による高分子溶存有機物の加水分解が、窒素循環を制御する重要なプロセスであることが示唆された。 3)甲殻類動物プランクトンの炭素・窒素同位体比から、動物プランクトンの主な餌源が、プランクトンネットによって採取されるような比較的大型の植物プランクトンではないことがしばしばみられた。また、同じ植食性動物プランクトンの中でも、同位体比が大きく異なるなど食物関係の複雑さが示唆された。微生物食物連鎖がこれらの湖沼における動物プランクトンの生産に直結している可能性が示唆された。 4)2年間の研究成果を総合し、湖沼の炭素・窒素循環駆動における微生物食物連鎖の役割について考察を加え、論文としてまとめた。
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