研究概要 |
平成6年度においては,南西諸島における代表的なマングローブ林分布地2ケ所を選定して,ボーリング調査等を実施して試料の採取を行った.それら試料に関する^<14>C年代測定結果ならびに花粉分析結果が得られたので報告する. (1)南種町(種子島)大浦川河口 コアー採取深度:ハンドボーラーを使用して地表から220cmの試料を採取 ^<14>C年代測定結果 深度193cm:3788± 98y.B.P.;深度75cm:539 ± 90y.B.P. 主要木本花粉としては,マツ属,スギ属,イヌマキ属,アカガシ亜属,シイノキ属,ヤマモモ属,アカメガシワ属,メヒルギ属などが検出された.草本花粉としては,イネ科,ヨモギ属,カヤツリグサ科など,シダ胞子としては,コシダ属,イノモトソウ属,単溝型・三溝型シダ胞子などが比較的多く検出された.マングローブ林構成要素の1つであるメヒルギ属は全層準から検出された.花粉組成の大きな特徴は,深度180cmを境として,それ以深ではマツ属花粉の占める割合が著しく高くなる.深度180cm以浅では,アカガシ亜属,シイノキ属などの照葉樹林を構成する花粉種の占める割合が多い. (2)西表島浦内川河口 コアー採取深度:動力機械ボーリングを使用して地表から15mの試料を採取 ^<14>C年代測定結果 深度167cm:490 ± 88y.B.P.;深度1075cm:4986 ± 105y.B.P.;深度1268cm:5588 ± 95y.B.P.;深度1463cm:5723 ± 94y.B.P. 主要木本花粉としては,マツ属,イヌマキ属,アカガシ亜属,シイノキ属,ヤマモモ属,ハイノキ属,アカメガシワ属,オヒルギ属,イボタノキ属,ハゼノキ属,ヤブコウジ属などが検出された.草本花粉としては,イネ科,ヨモギ属,カヤツリグサ科,ガマ属,アオウキクサ属など,シダ胞子としては,コシダ属,イノモトソウ属,単溝型・三溝型シダ胞子などが比較的多く検出された.マングローブ林構成要素の1つであるオヒルギ属は全層準から検出された.花粉組成から見た特徴として,全層準をとおしてアカガシ亜属,シイノキ属に代表される照葉樹林を構成する樹木花粉の頻度が高い.その中にあって,深度約200cm以浅ではマツ属の占める割合が比較的高い.つづいて深度200cmから深度約600cmの区間においては,イヌマキ属,ヤマモモ属の占める頻度が比較的高くなる.そして,深度約700cmを境として照葉樹林構成要素の中では,シイノキ属花粉の占める割合が圧倒的に多くなるのが1つの特徴である.
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