われわれの環境中に存在するさまざまな変異原については、環境中や試料中の濃度測定など、物理的あるいは化学的方法によるモニタリングが行われている場合があっても、実際の生物学的影響を検出する方法つまり現場での(in situ)生物学的とくに遺伝学的モニタリングは、その手法すら十分確立されていないのが現状である。加えて、動物保護の立場から、変異原性のテストを可能なかぎり高等真核生物である高等植物を用いて行う方向が国際的にうち出されており、その意味からも植物系テスターの確立は、緊急のニーズとなっている。 平成6年度の本研究では、花色について遺伝子型がヘテロ(青/ピンク)であるBNL4430株(アルキル化剤に高感受性)の若い花序つきshootsを培養液循環栽培装置内で大量に育成し、これを主な実験材料とした。 まず、各種変異原の効果の比較対象とするアルキル化剤については、前年度のMMS、EMSに次いで、同じく monofunctionalなアルキル化剤であるDMS(dimethyl sulfate)とMNU(N-methyl-N-nitrosourea)の効果についても調査を行い、DMSがMMSと類似した強い変異原性を示すが、そのX線との相乗効果の現われ方は、むしろEMSと類似していること、また、MNUとX線間には相乗効果が見られないことがわかった。 次に、除草剤などとして広範に用いられており、プロミュータジェンであることが判明しているMH(maleichydrazide)についても調査を行い、突然変異誘発に関するdose-response曲線を確立するとともに、MHがX線と相乗的にも相殺的にも働くことを確かめた。 ガス暴露装置を用いて処理する大気汚染物質の変異原性の調査については、現在、dose-response曲線を確立する実験を実施中であり、次年度の早い時期には確立できる見込みである。
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