研究概要 |
(1)前2年度とおなじく,照射中および,その直後に死ななかったミジンコを用いて生涯産仔数,生涯産仔回数,一腹産仔数,生存日数など,また同様のヒドラを用いて出芽速度,触手に対する超音波の影響をX線の場合と比較して調べた。超音波の場合非照射個体と差は認められなかった。(2)超音波の作用の一つとして考えられているラジカルの影響を調べるためにラジカルスカベンジャー(MEA)を用いた。ミジンコの生存日数,産仔数,ヒドラの出芽速度,培養細胞の生存率,分裂阻害などX線照射による傷害はいずれもMEAによって防護されたが,超音波の影響はMEAによって防護されなかった。(3)本年は超音波の複眼形成に対する影響を調べた。X線の場合には,個眼数の減少と個眼の形態異常が認められたが,超音波の場合には形態異常が主として見られた。眼の形成異常に対する高感受性の時期は眼の原基が形成される時期と一致した。(4)X線と超音波との交叉感受性を調べた。放射線感受性のL5178Y-M10細胞は超音波に対しても,L5178Y細胞より少し高い感受性を示した。(5)超音波照射群での出芽速度の増進がヒドラで認められた。その一つの原因は触手数の少ない子ヒドラが親ヒドラから離れることによることを認めた。この出芽促進に細胞増殖が関与するかについては,オートラジオグラフィー法と乾燥重量当たりの^3H-TdRの取り込みで,現在調査中である。(6)X線照射後に起きるSH含量,ATP含量の低下が超音波照射後にも見られるか調べているが,結論を出すのにもう少し実験を繰り返したい。(7)ヒドラは無限増殖をする。それで,X線と超音波を照射した後一個体も出芽出来なかったヒドラの割合からヒドラの個体の死亡率を調べた。
|