原爆被爆によって誘発された体細胞突然変異を詳細に調べるため、被爆者末梢血リンパ球T細胞のHPRT遺伝子変異を、多重PCRとRT-PCRによるcDNAのシーケンシングで解析する。本年度の主要課題は、(i)原爆被爆者および対象者の末梢血よりリンパ球T細胞のHPRT^-突然変異クローンを、それぞれ約50クローン以上収集する、(ii)多重PCRによるHPRT遺伝子エキソン領域バンドの増幅とRT-PCRによるHPRT遺伝子cDNAの回収とシーケンシング手法の確立、である。 [i]HPRT変異細胞のクローンの収集:広島の原爆被爆者で1.6Gy以上の被爆者群25名と、0.005Gy以下の対象群27名より採取した末梢血リンパ球T細胞より、被爆群58、対象群53のHPRT^-突然変異クローン細胞を収集できた。 [ii]多重PCR、RT-PCRによるcDNAの回収とシーケンシング手法の確立:HPRT遺伝子の9ケのエキソン領域バンドを1回のPCR反応で検出する手法が確立でき、前記被爆者群58、対象者群53のHPRT^-変異クローン全てについてエキソン領域の欠失などの有無を調べ、いずれのグループでも約10〜15%のクローンで異常が見られた。RT-PCRによるHPRT遺伝子cDNAの回収とシーケンシング手法も確立でき、一部変異クローンについて突然変異配列が同定でき、ほぼ計画に沿った研究が進展した実験を継続中である。
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