朝鮮半島と日本列島の間を流れる対馬暖流の真ん中に位置する対馬国定公園は、日本と大陸を結ぶ架け橋として、動物地理学上、また人文地理学上重要な位置を占めている。しかしながら、これらを育んだ対馬の自然環境とその保全の現状は、その重要性を軽視した「場当たり」的な開発、あるいは保全策によって大きな混乱状態にある。 本課題ではこのような現状に鑑み、対馬国定公園における環境保全を新しい生態学的視点から研究を行った。具体的には現状ですでに絶滅の危機に瀕し、「種の保存法」で真っ先に指定された「ツシマヤマネコ」をはじめ、対馬に同所的に生息する野生生物の保護に焦点をあて、生息地の生態系保全を網羅した長期的かつ有効な基礎資料を収集し、それによって人間活動もふくめた自然環境の保全を考察した。本年度に行われた調査とその結果は次の通りである。(1)対馬の生態系食物連鎖で最上位に位置する食肉獣3種(ツシマヤマネコ、ツシマテン、チョウセンイタチの生態、特に食性、行動圏、行動圏内の資源利用様式の解明(2)食肉獣の餌として重要な役割を果たしている小哺乳類について生息密度密度の季節変化と生息環境の評価(3)ツシマヤマネコの環境選択と人間活動による土地利用との関係を明かにした。(4)調査が難しくツシマヤマネコでは調査できなかった生態・行動についてノネコとイリオモテヤマネコについて行い、ツシマヤマネコと比較検討(5)報告書の印刷・配布
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