ミオシンの2つの頭部ABは活性リジン残基周辺の一次構造が異なっている。そこで、これらの部分に相当するペプチドをそれぞれ合成し、これらに対するウサギ抗体を作成した。抗体はもとの両方のペプチドと結合する不特異的な抗体とABのどちらかにだけ結合する特異的な抗体の両方が存在した。抗A抗体ならびに抗B抗体のいずれもミオシンならびにS-1(ミオシン頭部)と結合した。抗体とミオシンの結合は相対するペプチドでは殆ど抑えられないことからABに特異的な抗体のみがミオシンと結合すると考えられる。抗体のカラムによってS-1をEDTA-ATPase活性を持つS-1Bと持たないS-1Aに分離することに成功した。前者はミオシン-リン酸-ADP複合体を形成するのに対し、後者は形成しなかった。ウエスタンブロッティングによって抗体は活性リジン残基を含む25Kのペプチドとのみに結合することが示された。さらに、ブロッティングした後でも抗Aならびに抗B抗体はS-1AならびにS-1Bを認識することが示された。これまでにミオシンがABの2種の頭部を持っていることは明らかにされていたが、1つのミオシンがABの異なる頭部をもつのかどうかは明らかにはされていなかった。そこで、プロテインAを結合させた担体に抗体を結合させ、これにS-1ならびにミオシンがどのように結合するかを調べた。その結果、ミオシンは8割以上がA-Bのヘテロダイマー構造をとることが明らかにされた。
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