研究概要 |
本研究は、我々の開発した細胞膜上のレセプターを1分子のレベルで観察・操作する方法を用いて、膜骨格フェンス構造をベースとした細胞膜中で、レセプターと特定の膜裏打ちタンパク質がどのように相互作用し、集合し、それによって機能ドメインがどのようにして形成されるか、を解明することを目的としている。膜裏打ちタンパク質で被覆ピットの重要な構成タンパク質であるアダプター複合体(AC)の結合がトランスフェリンレセプター(Tf-R)の運動と集合に与える影響を調べた。Tf-RのcDNAにおいて、AC結合部位の点変異体、細胞質部分の欠失型を人工的に作製し、それらの変異型または野生型を強制発現させた細胞(米国のTrowbridge博士に供与された)を用いて、Tf-Rの運動、光ピンセットによる掃引に対する応答と、AC結合能との相関を解析した。 3種の変異体は、拡散運動に関してはほとんど差がなく、いずれも1x10^<-10>cm^2/s程度の拡散係数を示した。しかし、弱い力(0.05pN)の光ピンセットによる掃引で野生型は50nmしか掃引できないのに対し、点変異型、欠失型はそれぞれ150nm,300nmの掃引が可能であった。 光ピンセットの結果は、野生型分子のほとんどが被覆構造にトラップされていることを示しているが、その拡散係数は比較的大きく、野生型の多くが形成途中のやや不安定な被覆構造に入っていることを予想させる。これはCooperative Assembly Modelを支持する結果である。逆に点変異型、欠失型は、自由拡散を行っているにしては拡散係数が小さく、牽引距離が短いことから、AC-クラスリン以外の細胞骨格-膜骨格系とTf-Rの相互作用が存在することが考えられる。
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