本研究では、視物質のアミノ酸配列と機能との関連を知るために、数種の視物質のcDNAをクローン化し、それらを用いてウシ・ロドプシンを元にしたカセット法でキメラ視物質を作成し、その機能を解析をした。 1.カエルロドプシンと縁杆体視物質、メダカのロドプシンと4種の錐体視物質のcDNAをクローン化した。2.培養細胞で発現させたウシ及びカエルロドプシン、ニワトリ赤視物質は生体から単離したものと同じ性質を示した。キンギョUV視物質は発現が検出出来なかった。メダカ青視物質は約450nmに吸収極大を持っていた。ウシロドプシンN2Qは500nmに吸収極大を持ち、複数の異なる長さの糖鎖による修飾を受けていた。N15QやE113Yは視物質の生成を検出出来なかった。ウシロドプシンC322・323Sは吸収極大波長、光反応性、NH20H耐性とも元のものと変わりなかったが、メタ中間体生成速度が早くなっていた。3.ウシロドプシンの258番から295番のアミノ酸を、キンギョUV視物質、ニワトリの赤、青、縁視物質と入れ換えたものを発現させようとしたが、視物質は検出されなかった。次にウシ(B)とカワヤツメ(L)のキメラロドプシンを作成した。接続はウシロドプシンの257と258番及び295と296番に対応する残基の問で行った。BLB、LBL、LLBのいずれも吸収極大波長、光反応性、NH_20H耐性は元のBBBと変わりなかった。以上のように変異やキメラ視物質を培養細胞で発現させることが出来、その性質の一端が解析できた。しかし発現出来なったものも多く、今後改良が必要である。吸収極大波長の大きな移動やNH20Hに対する感受性は数個の特定なアミノ酸残基によるのではなく、多くのアミノ酸残基の協同的相互作用によることが考えられ、今後この機構についてさらに検討していく。
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