バクテリアのべん毛モータのMSリング複合体は、その半分が細胞膜内に埋まっている。大腸菌で大量発現したMSリング複合体を精製するために、非イオン性の界面活性剤であるトライトンx-100が用いてきた。しかし、人工膜形成のための脂質との交換を考慮にいれて、さらに結合力の弱いといわれるLDAO(Lauryldimethylamine oxide)を用いて精製を行った。また、従来の精製法では超遠心法によってMSリング複合体のペレットを作るため、その後の可溶化が難しかった。光散乱法による測定では、可溶化の激しい処理のあとでもいくつかの複合体からなる塊が存在することが示唆された。そこで、超遠心の際に庶糖溶液をクッションにしたところ、複合体の可溶性がよくなった。このようにして精製したMSリング複合体に、さまざまな濃度の(脂質/界面活性剤)溶液を加え2、3時間保温ののち、一晩透析により界面活性剤を除いた。用いた脂質はDMPC、CLである。脂質溶解のための界面活性剤にはトライトンX-100、LDAO、オクチルグルコシド、CHAPSを用いた。透析により界面活性剤の除かれた試料を電子顕微鏡で観察したところ、いくつかの(脂質/界面活性剤)の組み合わせで小さなベシクル(脂質膜)にリング構造が入っているのが観察された。膜内に取り込まれたMSリング複合体の量は、タンパク質濃度を上げれば増加するようである。ただいま詳細な条件を検討中である。
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