本研究の目的であるべん毛基部体を人工膜内に再構成するためには、基部体の全構造とそれが細胞膜内でどのように配置しているのか知ることが不可欠である。今まで基部体は単離されたものの構造しか知られてなかったが、前年度までの我々の研究により細胞質側に新たな成分が明らかにされた。それらはスウィッチ・タンパク質からなるCリングとべん毛タンパク質専用の輸送装置と思われるCロッドである。 本年度、我々は急速凍結レプリカ法を使ってCロッドの構造をさらに詳しく調べた。べん毛を形成するためには40もの遺伝子が関与しているが、そのうち約10の遺伝子の役割はまだわかっていない。特にRegionIIIに属するfliOオペロンの遺伝子群は小さな分子量の膜タンパク質らしく、その検出は容易ではなかった。我々はfliOオペロンの各遺伝子の安定な突然変異体(欠失のある)を用いて、急速凍結レプリカ法によりべん毛の基部を細胞質側から観察した。その結果、fliOではCロッドが欠失していることがわかった。また、fliQではCロッドは存在するが変形していた。fliPとfliRでは野性株となんら変わりはなかった。これらの観察からFliOとFliQはCロッドの形成に直接関与していると考えられる。
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