研究概要 |
本研究の第一目的は、一対のホメオボックス遺伝子BarH1、BarH2の共発現を制御している種々の細胞・組織特異的共エンハンサーを分子レベルで単離・同定する事である。個体レベルのエンハンサー活性検出用ベクターを作りBarH1,BarH2間の80kbを細分化し、得られたDNA断片を個別に発現ベクターに導入し、トランスジェニックハエのラインを確立し、LacZ活性の時間的空間的分布を調べることにより各DNA断片のエンハンサー特異性を調べ、ほとんど全てのBarH1/BarH2共エンハンサーのゲノムDNA上の位置を特定する事に成功した。特に、光受容細胞R1/R6、単眼前駆細胞、一次色素細胞、腹部体節中枢神経系細胞の特定のサブセット、es器官のグリアと神経細胞、脳の特定領域の細胞、肢や背の特定前駆体細胞等でBarH1/BarH2の特異的発現を決めているエンハンサーが特定された。BarH1/BarH2の肢での発現をモデル系として、BarH1/BarH2遺伝子を制御する上流遺伝子の効果を調べた。肢での環状及び点状でのBarH1/BarH2発現は、segment polarity遺伝子により形成される二次元位置情報により支配されていること、特に、BarH1/BarH2環状発現の中心は、A/P,D/V境界の交点の極近傍に形成されることを、異所的D/V境界形成実験から証明した。エンハンサーDNA断片にBarH1遺伝子を連結し、BarH1/BarH2エンハンサーの部分欠失株Df(1)BH2に導入し、約8kbのDNA断片に含まれる欠失エンハンサーが、ハエの行動制御に重要な役割を果たしていることを示した。 BarH1/BarH2の機能ドメインを決めるために種々の欠失変異体を作製し、熱ショックプロモーターによる複眼異常の熱誘発活性を調べ、ホメオドメインとその周辺がBarH1/BarH2タンパク質の機能発現に必須であることを示した。
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