研究概要 |
タンパク質の分泌経路において,オルガネラ間の輸送は小胞を介して行われている.近年,この小胞輸送におけるタンパク質の選別には,小胞のリサイクリングが重要であることが次第に明らかにされてきた.つまり,小胞体タンパク質についていえば,その小胞体への局在は,小胞体を一歩も出ないことによるものに加えて,いったんゴルジ体にまで輸送されたのち小胞体に送り返されることにより達成されているものがかなりあるということである.われわれは,酵母の小胞体-ゴルジ体間輸送に必須な膜タンパク質であるSec12pが,見かけ上は小胞体のみに局在しているにもかかわらずゴルジ体のcis領域における糖鎖修飾を受けることから,両オルガネラ間をすみやかにリサイクルしながら機能しているというモデルを提唱してきた.このSec12タンパク質をマーカーとし,小胞体-ゴルジ体間の小胞のダイナミックな動きを探るとともに,この過程にあずかる細胞装置を同定していくことをめざして,これまでに,Sec12pを誤ってtransゴルジ以降に輸送してしまう酵母変異株rer1とrer2の分離に成功している.本年度は,rer1遺伝子座がMAT座と連鎖していることを利用して,酵母第3染色体の整列クローンバンクから野生型のRER1遺伝子を分離することに成功した.ヌクレオチド配列から,RER1遺伝子産物は分子量約2万の膜タンパク質と推定された.現在その産物タンパク質の細胞内局在を検討中である.また,遺伝子破壊株は致死とはならなかったが,Sec12pの局在異常のさらに強い表現型を示した.また,rer1,rer2両変異株とも,ハイグロマイシンBに対して超感受性を示したので,これを利用して新たな変異株の分離や,多コピー抑圧遺伝子の分離をさらに進めていく予定である.
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