研究概要 |
タンパク質の分泌経路において,オルガネラ間の輸送は小胞を介して行われている.近年,この小胞輸送におけるタンパク質の選別には,小胞のリサイクリングが重要であることが次第に明らかにされてきた.つまり,小胞体タンパク質についていえば,その小胞体への局在は,小胞体を一歩も出ないことによるものに加えて,いったんゴルジ体にまで輸送されたのち小胞体に送り返されることにより達成されているものがかなりあるということである.われわれは,酵母の小胞体-ゴルジ体間輸送に必須な膜タンパク質であるSec12pが,見かけ上は小胞体のみに局在しているにもかかわらずゴルジ体のcis領域における糖鎖修飾を受けることから,両オルガネラ間をすみやかにリサイクルしながら機能しているというモデルを提唱してきた.このSec12タンパク質をマーカーとし,小胞体-ゴルジ体間の小胞のダイナミックな動きを探るとともに,この過程にあずかる細胞装置を同定していくことをめざして,これまでに,Sec12pを誤ってtransゴルジ以降に輸送してしまう酵母変異株rer1とrer2の分離に成功している.その相補を利用し,昨年度クローン化に成功したRER1遺伝子について,さらに解析を進めた.RER1遺伝子は,188アミノ酸残基からなる疎水性のタンパク質(Rerlp)をコードし,4つの膜貫通領域を持つ.C末端にHAタグをつけ,抗HAモノクローン抗体による間接蛍光抗体観察を行ったところ,ゴルジ体の染色像が得られた.Rer1pのゴルジ体局在は細胞分画によっても支持された.一方,rer1破壊株においても,Sec12pは依然として大部分が小胞体に局在しており,静的な残留のメカニズムは損傷を受けていないことが示唆された.以上のことから,Rer1pはゴルジ体において,誤って輸送されてきたSec12pを小胞体に送り返す役割を果たしているのではないかと考えている.
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