研究概要 |
マウス骨髄性白血病細胞M1は、IL-6やLIFといったサイトカインによってマクロファージへと分化を誘導される。この分化に際して、貧食能や運動能といったマクロファージに特有の機能が誘導されるだけでなく、細胞質の膨大や核の偏在と言った顕著な形態的変化をも誘導される。このような変化を惹起する因子として、中間径フィラメントの関与が考えられているが、われわれはM1細胞の分化に際して、中間径フィラメントの一種、ビメンチンが顕著に誘導されてくることを見い出した。ビメンチン蛋白質の合成、その蓄積、ビメンチンmRNAの蓄積などをそれぞれ2次元電気泳動、ウエスタンブロット法、ノーザン解析などによって明らかにし、細胞内におけるビメンチン東の出現を、蛍光抗体法および電子顕微鏡による観察などによって明らかにした。またこの分化に伴うビメンチン遺伝子の誘導は、転写レベルで調節されていることが、核ランオン解析によって明らかになった。 そこでこの誘導調節機構を明らかにするため、本年度はビメンチン遺伝子のプロモータ領域を解析した。ビメンチンのgenomic DNAの転写開始点より上流3kbまでの塩基配列決定を行い、その下流にCAT遺伝子をつなぎ、ビメンチンの発現に対して働くプロモータ/エンハンサーの同定を行った。この領域には、NF-IL6 binding site,PER3 sequence,CAAT boxなどのエレメントが含まれていた。また遺伝子工学的手法によって、種々のdeletion mutantを作成し、それぞれCAT遺伝子につないで、同様にM1細胞に導入することによってプロモーター活性を測定した。その結果、M1細胞だけでなく、その他の繊維芽細胞においてもビメンチン発現を正および負に調節する2つのエレメントを同定することができた。転写開始点上流-133bpまでの領域に存在するCAAT boxが主要な正の活性を、またCAAT boxから僅かに上流に存在するPER3エレメントが負の活性を担っている、サイレンサー活性を有することが明らかになった。
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