P-450のER残留シグナル:分泌型カルボキシエステラーゼをレポーター蛋白質として用いP-450部分との色々な融合蛋白をCOS細胞内で発現させそれらのN-糖付加の挙動と間接蛍光抗体法による局在化挙動を解析した。その結果P-450の膜結合領域(TM)にER残留シグナルがあることを明らかにした。さらにこの残留は、一旦ERを出てゴルジ装置に到達した後に回帰するのではなく、恒常的にERに留まるという今まで報告のない新たな様式によっていることも明らかとなった。またTM部分の近傍にはP-450の構造形成に重要な領域が存在することも明らかにした。 膜蛋白質のER膜残留機構:ダブルリジンモチーフを介してER膜残留の機構を酵母を用いて解析した。酵母ER膜蛋白質WBP1のTM部分を含むC末端領域をインベルターゼのC末端に繋ぎ酵母で発現するとインベルターゼは細胞内に留まった。酵母に変異を惹起しインベルターゼを細胞表層に発現する温度感受性変異株を6株分離することに成功した。このうちの1株はER-ゴルジ装置間の輸送が温度依存的に障害をうけることから、ER残留に関わる遺伝子の変異であることが明らかとなった。 P-450のER残留シグナルに関しては生化学的にP-450の残留シグナルを特定しかつ間接蛍光法によってこれを確認するという当初の研究目的は完全に達成された。これによって蛋白質の膜結合領域がER残留シグナルとして働いているという新規な知見を得た。酵母を用いてのER膜残留機構の遺伝学的解析に関しては分離した温度感受性変異株に残留機構に障害を持つ株が存在したことから計画のかなりが達成され、分子機構解析に向けての重要な成果を得ることが出来た。
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