研究課題/領域番号 |
05454655
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
中辻 憲夫 国立遺伝学研究所, 遺伝実験生物保存研究センター, 教授 (80237312)
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研究分担者 |
白吉 安昭 国立遺伝学研究所, 遺伝実験生物保存研究センター, 助手 (90249946)
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キーワード | 始原生殖細胞 / 生殖細胞 / マウス / 細胞増殖 / 増殖因子 / TNF-alpha / 発生工学 |
研究概要 |
マウス胎仔の7日から10日齡から取り出した始原生殖細胞は、培養下で最初は遊走細胞の形態を示すが、やがて比較的集合した形態となり、細胞数の増加も停止して減少する。この変化は生体内での細胞移動と生殖巣への集合、そして増殖停止と対応しているので、始原生殖細胞は培養下で自律的に性質の変化を起こすことが明らかとなった。次に、始原生殖細胞の対外培養を行なうための条件を検討して、BRL細胞の培養上清が細胞増殖に効果を持つことを見いだした。また、移動期までの早期に特異的に始原生殖細胞の増殖を促進する新しい因子として腫瘍壊死因子TNF-alphaの顕著な効果を発見した。さらに、その他の因子を加えて培養条件を改良することによって、これまでのところ7〜8日齡始原生殖細胞の増殖を培養下で1週間以上続けさせて、細胞数を約100倍に増加させることが可能になった。この増殖速度と細胞数は、胎仔内での生殖細胞の増殖パターンをほぼ再現できたことになる。一方、培養下の始原生殖細胞への遺伝子導入を行うための予備実験として、SV40ウイルスのlargeT遺伝子の導入を行なったのちに、それに対する抗体と組織化学染色との二重染色を行なったところ、生殖細胞における導入遺伝子の発現を確認した。 今後の計画としては、腫瘍壊死因子の始原生殖栽培に対する増殖促進効果は、この因子の新しい生体機能を示している可能性があるので、この時期のマウス胚でのTNF-alphaの発現パターンを解析している。これにより重要な知見が得られる可能性がある。また、培養条件の改良によって、始原生殖細胞から雌雄配偶子への文化開始を研究できる可能性が現れた。これに成功すれば、体外培養において生殖細胞の文化に関わる因子や細胞間相互作用を研究するための新たな実験系を開発できることになる。
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